一部の愛好家から熱狂的な支持を集めたFAL(古山オーディオラボ)のSupreme-S C60。流通の少ない中古オーディオのYahooオークション落札価格情報。
なお前期と後期ではかなり音質が異なるモデルでもあります。最後期は品質が低下したとされ、初期の中古ほど貴重とされます。
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3つのヤフオク落札履歴
価格・人気・コンディション
今回のオークションは低調です、人気が集まらなかった理由は2点。
- マイナーブランドであること
- オークションの開始価格が高い
本来ならばオークションが成立しない条件ですが、音質が良いため一部のファンから熱狂的な支持を得ているモデル。
そのため困難な条件でも入札がありオークションが成立しました。
- 落札価格:¥122,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★☆☆(49人)
- コンディション :★★☆(Average)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 中古 FAL Supreme-s C60F FLAT engineフルレンジスピーカー ペア 動作品 発送180サイズ×2
- 出品者
- 出品者ID:pro********
- 出品社名:ー
- URL:https://auctions.yahoo.co.jp/jp/show/rating?userID=promarket8
- 評価(良い): 99.6 %(取引 1310件中・ 2024年 4月時点)
- 入札件数:3件
- 引き取り限定(出品者による配送手配不可)
- オークションID:o1118623737
- 出品地域:静岡県
FAL Supreme-S C60の音質
オーディオ雑誌と評論家レビュー
雑誌メディアでのFAL Supreme-s C60Fに関するレビューはほぼありません。FALスピーカー全般においてメディアの注目を集めることはありませんでした。
口コミで高い評価を得た特殊な成り立ちのスピーカーです。最後期には東京・秋葉原に直営の試聴室を構え、社長である古山磐雄氏みずから売り込みを行なっていました。
評論家による試聴エピソード
数少ない音質レビューは『Stereo』(2004年3月号・音楽之友社)によるもの。ただしSupreme-s C60Fに対してではなくその取材時に展示されていたスピーカー全てに対するものであり、言い換えれば主語不明のレビューです。
- ため息を抑えられないほど躍動感のある音
- どこにスピーカーが置いてあるかわからないほど音場のスケールが大きい
村井裕弥というライターが書いているのですが、あまりにも大げさな記事のためこれ以上の紹介は控えます。
誇張する必要など全くない高音質。
実際に音を聴いた人々の噂が評判になった実力のあるスピーカーです。
注目された音質技術と現実の評価・精度と小面積振動板によって平面振動板のデメリットを克服した
平面振動板のスピーカーユニットが最大の注目技術。
1980年台には日本のオーディオメーカーがこぞって採用し、あっという間に消えた技術です。
理由は振動板の剛性が保てず、分割振動をしてしまうため。
この点についてFAL(古山オーディオラボ)、というより開発元の調所電器は
- 比較的小さい面積の振動板を使う
- 分割振動が生じづらいハニカム構造の振動板を使う
- 複数のマグネットで振動板を支持させる(SONYが類似の技術をもっている)
小さい面積であったことが幸いし解像度が高く機敏な反応を得ることができています。
しかしながら複数のマグネットを実装するためには高度な制作技術が必要となり、後年のメンテナンスが難しくなるという問題を抱えることにもなりました。
ヤフオク落札相場データ
過去の落札相場と最新の出品検索
※過去3ヶ月間にオークションでの落札がない場合、履歴は表示されません。
※現時点で出品がなされていない場合、検索結果は表示されません。
※Yahooオークションの落札履歴はシステム上の理由から最大2年で抹消されます。
当サイトでは消える前にデータを保管し、著作権上問題のないものを掲載しております。
2024年まとめ・過去の落札価格(ヤフオク)
(20204.5)
直近の販売実績では¥150,000ー180,000(JPY)。
その他のFALモデルも同じですが、Supreme-s C60F FLAT engineは販売例が少なく中古オーディオショップでも買取価格がよくわかっていないモデルであります。
スピーカーユニットの状態を判断しづらいことも専門業者での流通が少ない理由です。
- 落札価格:¥84,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★★★(152人)
- コンディション :★★★(EXCELLENT)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 出品者
- リサマイ市場・本館
- 総合評価(良い):99.2%(146,958件中)
- 出品地域
- 静岡県
- 入札・落札情報
- 落札者 604*** / 評価 117
- 開始価格 1,000 円(税込 1,100 円)
- 開始日時 2023.01.29(日)18:44
- 終了日時 2023.02.05(日)22:34
- オークションID m1080122762
- コンディション説明:
- シリアルNo:不明
- 動作確認済み
- 目立つ傷なし
- 恐らくは後期のもの(スピーカーユニットの取り付け位置が高い)
➡︎上記から能率は95dBを超えている可能性がある
- 落札価格:¥69,190(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★★☆(62人)
- コンディション :★★☆(Average)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 今となっては貴重な逸品「FAL Supreme-S C60F」 平面スピーカー フルレンジ ペアー 完動品
- 出品者
- * * * * *
- 総合評価(良い):99.2%(1,092件中)
- 出品地域
- 愛知県
- 入札・落札情報
- 落札者 2b0*** / 評価 1535
- 開始価格 1,000 円(税 0 円)
- 開始日時 2023.07.27(木)20:37
- 終了日時 2023.07.30(日)22:15
- オークションID h1100603185
- コンディション説明:
- シリアルNo:不明
オーディオショップの中古価格
ハイファイ堂・オーディオユニオンほか
よくある故障・不具合
コンディションにみる注意点
コンディション判定『★★★☆☆()』の個体。
「買ってはいけない」中古の注意したいポイント
C60Fに限らず、FALの中古モデルは、スピーカーユニットに問題がある個体を選ぶことは絶対に避けてください。
具体的な症状としては
- 振動板表面にひび割れが見られる
- 出力時にノイズが生じる(磁気回路の調整が必要)
このスピーカーは高確率でメンテナンスができません。1990年代後期までに製造されたもののみ調所電器でメンテナンスを受け付けてくれる可能性があります。
そもそもガレージメーカー特有の弱点として、経年変化に対する知見は少ない。
このスピーカーはもともと大入力に強いものではなく、振動板の振幅が大きくなりやすい構造からボイスコイルの破損・劣化が起こりやすい仕様です。
一方で製造・修理には精密な調整が不可避となる仕様であります。
FAL Supreme-s C60Fの仕様
音質技術とオーディオ機器としての寿命
Supreme-s C60Fの技術仕様を知る上で最大のポイントは3点
- 平面振動板スピーカーであること
- マグネット強化に伴う相対的な低音のレベル低下に対応した改良が続けられたこと
- メーカーはFALではなく(株)調所電器の設計・製造であったこと
景山式スピーカーとしての発売時期は昭和51年(1976年)であり、50年近く改良が続けられたスピーカーユニットです。
メーカー・発売年次と定価
基本構造を変えることなく40年以上作られ続けたスピーカー。少なくないファンを獲得しており、少数ながら輸出もされています。
- メーカー:FAL(古山オーディオラボ)
- モデル名・型番:FAL Supreme-s C60F FLAT engine
- 発売年次:1980年ごろ
- 定価:¥330,000(/ペア・JPY)
FAL(フルヤマオーディオラボ)は工場を持たないため、調所電器からのスピーカーユニット供給が途絶えた2000年ごろから生産委託先を転々としています。
主要スペック
- 主要スペック
- 大きさ:W200×H930×D250(ベース部:W300×D300mm)
- 重さ:14Kg(/本)
- 能率:95dB/W/m(Ω)
- インピーダンス:8Ω
- 周波数帯域:40Hz(fo)~14KHz
- 推奨アンプ:真空管方式(出力:8W以上)
- スペック上の注目ポイント
- ハニカム構造の発泡樹脂による平面振動板を採用
- 振動板サイズ:大きさ60mm×80mm/厚み 4mm
- 表面に特殊なダンプ材を塗布(経年変化による割れが発生する)
- 振動板の表裏面に溝を入れて剛性を上げた
- マグネットの支持面積を広くとり(複数ポイントで支持)分割振動を防ぐ
- ネオジウムマグネット(初期はフェライトマグネット)
- ボイスコイルは角形に巻かれ、かつマグネットはコイルの左右のみカバーしている(ボイスコイル上下にマグネットが入らない)ことによりユニットの高域インピーダンス上昇を防いだ。
- ボールピースがない、また通常のスピーカーユニットにあるダンパーが存在しない。
- 平面振動板スピーカーとしては指向性が広い(正面を外れても高域の減衰が少ない)
- ハニカム構造の発泡樹脂による平面振動板を採用
インピーダンス上昇を抑えた結果として、アンプに対して大きな電源供給能力を必要とするスピーカーユニットとなっています。駆動するアンプにより音質の変化は大きいといわれた所以です。
また出力トランスを持つ真空管アンプとの相性は良かったといわれ、FALとしても自社の真空管アンプとの組み合わせを推奨していました。
FALの平面振動板スピーカーは「景山式スピーカー」・調所電器が開発
大前提としてFALはメーカーではなくあくまで販売店であり、Supreme-s C60Fの原型は(株)調所電気で開発された「景山式スピーカー」であることをはっきりさせる必要があります。
FAL(当時の古山オーディオラボ)は調所電器からスピーカーユニットの供給を受けてFALスピーカーとして販売していたディーラー業務が主となります。
製造メーカーからみた製造技術とオーディオ機器としての寿命
2000年ごろから両社の関係は途絶し、その頃からFALスピーカーは品質面での変化、というより劣化が始まります。
ほぼダンパーレスであるなど、高い組み立て精度を必要とする特殊なスピーカーユニットゆえに、高品質な製造委託先を見つける困難が伴ったようです。
中古のメリット・デメリット
最新スピーカーとFAL Supreme-s C60Fの比較
FAL Supreme-s C60Fの音質レビューはむしろネット上に多い。
メリットは独特の音質、特に反応の良さは格別なものがあります。
FALスピーカーの欠点とは・低音と品質のばらつき
デメリットは3点、
- ほとんどダンパーレスに近い構造のため耐入力が低く、大音量または振幅の大きい低音が入力されるとボイスコイルが底打ちしてノイズが出る
- 低音が出ない(150Hz前後より下ではレベルが急速に低下する)
- 制作には熟練した職人の作業が必要であり修理が困難
開発した調所電器との取引関係が悪化したのち、FALのスピーカーは製造委託先を求めてさまざまなメーカーを転々とします。
これがために音質を含めた品質はばらつきが生じています。Supreme-s C60FだけでなくFAL製スピーカーの中古の価値を下げる理由となりました。
そしてFAL(株式会社ファル)は2022年に代表取締役である古山磐雄氏の引退に伴い、その活動を停止しました。
従ってメンテナンスも受け付けていません。
現在FAL製品の修理は2つの方法があります。
- 調所電器と提携していた時代に同社が供給したスピーカーユニットを搭載する個体のみ調所電器で修理する
- 株式会社ファルから修理を委託されたといわれる『サウンド工房エダマツ』という会社においてメンテナンス可能
このうちサウンド工房エダマツについては実際の対応や技量が不明です。
FALの中古はなるべく古いものを買うべき理由
実はFALの中古は古いモデルほど価値があります。
音質が良く、しかも上記のように調所電器で修理対応出来る可能性があるため。
そもそもFALスピーカーの音質改善は常に低音の再生帯域を拡大することでした。そのため初期と後期では音質が異なる。技術的なアプローチとしては、
- 振動板を重くしてより低い再生周波数帯域を再生する
- 振動板が重くなった分、応答性を改善するためにマグネットを強化する
- マグネットが強力になるため低音が出にくくなる(そして「1」に戻る)
基本的にはこの3つの作業を繰り返し続けました。
2000年代には調所電器との関係が絶たれたため、技術的なアドバイスを受けることもできなかった。
振動板の実効質量は重くなり続けました。そのため初期モデルでは軽快だった音質は、最後期には重くソフトな ー言い換えれば鈍いー 音と変わっていきました。
はっきり申し上げてスピーカーユニットの精度も調所電器が供給していた頃のユニットのほうが品質が高いという事実もあります。
ロットNo等の管理をしていないモデルであるため判別が難しいのですが、2000年以前に購入したワンオーナー品であれば価値は高いと言えます。