ちょっと珍しいスピーカーの出品がありましたので記録します、Evett & Showのスピーカー「Elan」です。
実に丹念に造りこまれた佳品ですが、残念なことに海外スピーカーによくある例として日本のように高温多湿な条件を考慮しない設計からユニットのエッジに破損があります。
本件はおすすめ事案としてでなく、今後同様の機種を検討する際の注意例としてご参照頂ければ幸いです。なおエッジ破損の個体については例外的にリペアという選択肢もとるべき価値があると思います。
落札価格情報
- モデル名(型式):Evett & Show(エベットアンドショウ)「Elan」
- 落札価格:¥35,500
- 落札日時:2021.06.09(水)23:03
- サイトURL:https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n514444966
- 出品者:リサマイ市場・本館(ID:toomookaanaa)
- ウオッチ数:119人
- 入札件数:186
- 入札履歴:
スペック・諸元(Evett & Show Elan)
- 発売時期:1998年10月
- 発売時価格:¥418,000(ペア/本国価格:USD2,200)
- 生産国:米国(ユタ州ソルトレイクシティ)
- 方式:2ウェイ+サブウーファー(パッシブラジエーター)システム
- 外径寸法(本体)W100×H200 ×D250(mm)
- 筐体材質:アルミニウム(6.5mm厚)+木部はプリント化粧ビニールシートを貼り付け後、更に塗装
- 重量:5Kg(スピーカー本体のみ・1本)
- インピーダンス:8Ω
- 再生周波数帯域:55Hz〜18Khz
- クロスオーバー周波数:250Hz
- 出力音圧レベル:80dB(W/m)
- ユニット構成
- 中・高域:6.35cm(2.5インチ)樹脂コーン型×1
- 低域:6.35cm(2.5インチ)樹脂コーン型×1
- パッシブラジエーター:6.35cm(2.5インチ)樹脂コーン型×1(低音ユニットと基本同じ)
出品コンディション
【ご注意】
ヤフーオークションの著作権は出品者にあるため画像の転載は致しません。
恐れ入りますが画像そのものは上記の「サイトURL」よりご確認をお願い致します(本文中のURLリンクはアフェリエイトではありません)。
以下では出品者画像から読み取れる情報と通常市場で取引されるUsedとの差について以下記載致します。
コンディション詳細
- シリアルNo:0286(R・Lともに)
- 底面ユニットから音でず
- バナナプラグが一部内部に残った状態
- 筐体の状態は良好
この製品は設計だけでなく素材と仕上げ処理も極めて吟味されているため逆に傷がつきやすいのですが、一番傷つきやすい側板は美麗。
天板に若干の小傷がありますが、許容範囲内と思います。
ユニットは底面に配置されたサブウーファーユニットはエッジに亀裂が入っております。
正面フルレンジユニットは美麗です。
このような事例は特に海外製スピーカーに多く理由は2点あります。
- 日本やアジアの高温多湿な環境を考慮しないエッジ素材を選択したこと
- ウーファー・サブウーファーは再生周波数の性質から振動板の振幅が大きいためエッジへの負担が大きいが、設計時その条件想定が甘かった。
ウーファーユニットのエッジは要注意(他の機種においても)
高温多湿の環境がもたらす悪影響はウレタンエッジを多用したJBLで有名ですが、ウーファーやサブウーファーのについては常時振幅が大きいこともかなり影響しています。
中域中心の前面ユニットと異なり低音は常に数ミリの振幅を続けているためエッジが疲労・破断します。
この個体もエッジに保護ネットが接触した跡があり、再生時かなり大きくスイングしていたことがわかります。
また本機種によらずパッシブラジエーターは通常ダンパー等を入れないためウーファーよりも更に振幅が多くエッジ破断が起きやすい。
国内のメーカーでも同様の理由で破損するものがあるため、中古のスピーカー選びではウーファーのエッジについて特に慎重に確認する必要があります。
また確認できないという点からユニットをエンクロージャー内に内蔵しており目視で確認できないサブウーファーは中古で選ぶことを避けたほうが良いと思います。
製品イメージ
発売時このスピーカーの意味が理解できませんでした。
1998年はパソコンでのオーディオ再生は音質的に見るべきものがなかったためです。
MP3音源しかなかった時代にハイレゾ以上に対応するクオリティ
iPodの発売が2001年、音楽共有サービスで違法性を問われたナップスター(Napster)の創業が1999年です。mp3の音源しかなく音質は悪かった。コンパクトなCDプレーヤーはミニコンポレベルのものがほとんどでした。
また本機種は低能率ですが当時デジタルアンプもないため組み合わせる大出力でコンパクトなアンプもない。
高品位のデスクトップスピーカーの存在意義についてはせいぜいが高級なインテリアの延長ぐらいしか実感できない時代でした。
ハイレゾ等の音源が主流になりSONYからSA-Z1のようなスピーカーがリリースされる現在、やっとこのスピーカーに再生側が追いついたといって良いかと思います。
中高域はフルレンジのため高域が伸びていないとする向きもありますが、実際にはレベルが下がりつつかなり上まで伸びています。
デスクトップスピーカーは特性測定のために定められた距離(1m)よりはるかに近接して聴くためカタログ値よりも高域は伸びます、実使用においては問題がありません。
何より筐体を含め変換器として不要振動を排除した設計により全体域の音情報が高密度です。
そうなるとエッジが破損した個体をどうするかの判断が求められますが、このスピーカーについては例外的にエッジ交換も選択肢と思います。
発売から16年を経た現在でもデスクトップスピーカーとしてこれほど造りこまれたものはあまりありません。
なおEvett & Show自体はその後経営方針を変更しホームシアター分野をメインとしたことから、本機の後継はリリースしておりません。
ハイレゾ等の音源と対応する高品位の機材が普及した現在、これをお持ちのユーザーは幸運な環境におられると思います。