muRata ES024は世界的に類例のないユニークなスピーカーでした。おそらく今後もこのようなスピーカーは作られない。
そもそも大音量が絶対に出せないなど使用条件は限られるのですが、その範囲内では不気味なほどの立体像が浮かぶスピーカーです。
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3つの重要なヤフオク落札履歴
中古市場におけるmuRata ES024の評価は、以下の人気・価格・コンディションに現れています。
人気はない、しかし高価というもの。つまり鋭く反応する好事家がいるモデルです。
人気・コンディションと落札価格
- 落札価格:¥250,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★★☆(61人)
- コンディション :★★☆(Average)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- murata ES024
- 入札・落札情報
- 入札件数:1件
- 開始価格 250,000 円(税 0 円)
- 開始日時 2023.02.25(土)21:04
- 終了日時 2023.03.04(土)21:04
- オークションID h1080975657
- 出品者
- アカウント抹消
- 出品地域
- 岐阜県
- コンディション説明:
- シリアルNo:000053/000054
- 動作確認済み
- 右チャンネルに日焼け
- 専用スタンド(ES-ST01)あり
muRata ES024の音質とは
文字通り「音に包まれる」というレビューが相次いだ話題作です。
同時にほぼ全てレビュアーから、少し大きめの音量でもすぐにクリップノイズが出たという報告が相次いだモデル。
オーディオ雑誌や評論家の過去レビューまとめ
ほとんどサラウンドに近く、ホールトーンは頭上から降り注ぐといわれたほどの音場表現です。
無指向性スピーカーの特徴を存分に発揮したモデルと評価されました。
- 不気味なほど緻密な音場感、コンデンサースピーカーでもここまでの表現は不可能。
- 透明かつ広大な音場、残響音が見えるように浮かび上がる
- かなりの小音量で聴いた場合という前提で、反応が極めて速い。抜群のトランジェント。
- 大音量はもちろんのこと、中音量での再生も困難。よほど大出力・電源供給力のあるパワーアンプでなければ鳴らない。70dBという能率は非常識といっていい。
- ES024の表現は唯一無二であるため、もしこの音に魅了されたなら他のスピーカーは存在しない。
大出力・重量級のアンプと小型のES204というアンバランスな組み合わせで聞くしかない。
季刊Stereosound No145(2002年)において優秀製品とされましたが、同時にハードウェアとしての完成度は低いとの注釈がつきます。
しかしながら音を聴いたほぼ全ての評論家から、気になるモデルとコメントされました。
注目された音質技術と現実の評価・人気
手で触れることができるような音像表現は、ある意味至高とも言われたスピーカーです。
一方で能率が極端に低く、音量を上げれば壊しかねないという「欠陥」ともいうべき特徴を持ったモデル。
大多数のオーディオ愛好家は、音量を上げただけでクリッピングノイズを出す性質を敬遠しました。
しかし小音量で映像のように浮かび上がるステレオイメージを聴きたいという少数派から絶大な支持を得ました。日本のオーディオ愛好家に多い音楽の聴き方です。
そのため大して上質な仕上げがなされていないにもかかわらず、中古も値下がりしません。
自分の好みを知り尽くした愛好家の間で取引されているスピーカーです。
ヤフオク落札相場データ
※過去3ヶ月間にオークションでの落札がない場合、履歴は表示されません。
※現時点で出品がなされていない場合、検索結果は表示されません。
※Yahooオークションの落札履歴はシステム上の理由から最大2年で抹消されます。
当サイトでは消える前にデータを保管し、著作権上問題のないものを掲載しております。
(2024年まとめ)過去のオークション落札履歴
- 落札価格:¥180,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★★☆(61人)
- コンディション :★☆☆(Poor)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- (R502-B316)現状品 球形スピーカー 村田製作所 muRata ES024 ペアスピーカー 1本定価240000円 シリアル:000101/000102 連番
- 入札・落札情報
- 入札件数:1件
- 開始価格 180,000 円(税 0 円)
- 開始日時 2024.08.25(日)21:04
- 終了日時 2024.08.26(月)21:04
- オークションID s1084799408
- 出品者
- nex********
- 総合評価(良い):99.9%(5753件中)
- 出品地域
- 大阪府
- コンディション説明:
- シリアルNo:000101/000102
- 音量を上げると音割れ(ノイズ発生)する
- 故障かそれとも本モデル特有のものかどうかは不明
- 天板の取り付けネジ紛失
- キャビネットに傷・汚れ多数
- 天板にシールを貼った跡あり
8月 26日 18時 34分 | amp******** 入札。数量: 1 で 180,000 |
8月 25日 21時 04分 | オークション開始。数量: 1 で 180,000 |
- 落札価格:¥336,000(JPY・税別)
- コンディション :★★☆(Average)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 球形スピーカー 村田製作所 muRata:ES024+ES-ST01
- 入札・落札情報
- 開始価格 54,546 円(税込 60,000 円)
- 開始日時 2023.02.14(火)13:30
- 終了日時 2023.02.22(水)01:33
- オークションID j1081833686
- 出品者
- audiounion新宿店(株式会社ディスクユニオン)
- 総合評価(良い):99.9%(1563件中)
- http://www.audiounion.jp/shop/shinjuku.html
- 出品地域
- コンディション説明:
- シリアルNo:不明
- 動作確認済み
- 専用スタンドあり
- 取扱説明書あり
- スピーカーの元箱あり(スタンドの元箱なし)
- ツィーターの取り付け用専用金具あり
- キャビネットに傷・汚れあり
(2021年まとめ)過去のオークション落札履歴
以下のYahooオークションURLはデータ抹消されております。そのため以下の「出品者・コンディション情報」情報をご参照ください。
- 落札価格:¥335,456(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★★★☆☆(人)
- コンディション :★★★☆☆(ExcellentAveragePoor)
- 落札価格:終了後記載
→(5月19日)303,755円で落札。
→(6月1日)再度出品されました・¥335,456にて落札
最終入札者の取り消し履歴が確認できました。なお再出品されたものはシリアルから同じ個体と確認しております。 - 終了日(予定):5月19日(21:58)
→再出品後の入札終了日:2021.06.07(月)21:35 - サイトURL:
(初回)https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d527836964
(再出品時)https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/w474731664 - 出品者:ウエスト(Tunagu株式会社) tunagu5555
- 入札件数:
→(初回・5月19日)133件
→(再出品・6月7日)124件
コンディション概要
画像から確認できる限り高域/低域ともにユニットには傷がありません。エンクロージャについては下地が見えない程度の、しかし数ミリの傷が数カ所見られます。
各部の詳細なコンディション
- シリアル連番(No:000153/000154)
- 本体木部ならびに入力パネルに小傷が見られます。
- 中高域用の振動板(金色の半球部分)に亀裂なし。
- 中低域向けウーファー(底面)の振動板や周辺に傷や亀裂なし。
- 純正ジャンパーバー付属
オーディオショップの中古価格
販売数が少ないため、オーディオ専門店でも中古の流通は少ないモデルです。
よくある故障・不具合
以下よりコンディション判定『★★☆(Average)』となります。動作は問題なく専用スタンドもあるものの、キャビネットに汚れが目立つ。
出品されたmuRata ES024のコンディション評価
「買ってはいけない」中古muRata ES024のポイント
半球型スピーカーユニットの状態が完全かどうかが最大のポイントです。このスピーカーユニットは今やどんな修理業者をもってしても修理不可能です。
70dBという高域ユニットの極端な低能率から、アンプのクリップノイズによりユニットが破損しやすい機種でもある。
またセラミック振動板ですから、ダイヤトーンのボロンほどではありませんが、同じく衝撃には弱い。
可能な限り現物を確認したい機種ですが、今や中古ショップに出回ることもまれであるため、今回のようなオークションを利用するしかない場合は要注意確認です。
高域ユニット(半球型スピーカーユニット)に破損がないこと
セラミックドームの破損については、僅かでも割れがないかどうかを入念にチェック。
ドームだけでなく周辺部分のわずかなヒビもないように。
ウーファーについていえば、ダイナミックレンジの広い録音を再生した場合にビビりがないかどうか(人の声やピアノのフォルテシモ、またはパイプオルガン)ボイスコイルに異常がないことを確認するためです。
後に詳しく述べますが、この機種は本質的に以下の課題を抱えたスピーカーです。
- 過大入力によるユニット破損(ウーファーのボイスコイルほか)が生じやすい
- 衝撃に弱い
当時これを購入したユーザーはそれを理解した上で買いましたが、それでも使用条件による破損(劣化ではありません)が起きたほどです。
muRata ES024の仕様・史上唯一の球形スピーカー
muRata ES024は球形スピーカーという例のない構造を持っています。
圧電型素子を製造する村田製作所だけが可能だった技術です。
メーカー・発売年次と定価
発売当初は村田製作所のウェブサイトによる直販のみという形態で販売が開始され、オーディオ専門店の要望によりデモ用モデルが供給されたという経緯があります。
- メーカー:muRata(村田製作所)
- モデル名・型番:ES 024
- 発売年次:2002年
- 定価:¥(240,000/台・JPY)
muRata ES024の主要スペックと音質技術
球形スピーカーは別名「呼吸球」方式とも呼ばれます。
端的にいえばボールが膨らんだり縮んだりすることで音波を生じるのですが、超高音を再生できるような素材は硬く、低音を生じるほどの収縮はできません。
そのため方向性を感じなくなるとされる低域は特別な平面振動板のウーファーに再生させる2ウェイ方式です。
- 主要スペック
- 方式:無指向性2ウェイシステム
- 外径寸法:△200×H300(mm)
- 重量:4Kg(1本)
- インピーダンス:8Ω(最低:5Ω)
- 再生周波数帯域:50Hz〜30Khz
- クロスオーバー周波数:350Hz
- 出力音圧レベル:70dB(2.83V/m)
- 高域:セラミックドーム×1
- 低域:平面振動板ウーファー(ダンパーレス)×1
- オプション品:専用スタンドあり(¥100,000/ペア)
- スペック上の注目ポイント
- 半球型の圧電セラミック振動板による球形振動板により中高域を再生する無指向性スピーカー
- 独自開発のダンパーレス平板ダイナミック型ウーファー
- 中高域ユニットはバックロードホーン形式
- 低域ユニットはバスレフ方式
- 専用スタンドにより同社製ツィーター(ES103A)を追加しさらに超高域のレンジを拡張可能
製造メーカーの目でみるオーディオ機器としての寿命
球形の振動板はセラミックのため、衝撃に注意する必要があります。割れる可能性はある。
村田製作所でもわかっており、ツィーターとして発売した「ES-103A」「ES-105」には専用のハードケースが付属していました。
- 上述の過大入力によるスピーカーユニットの故障
- 球型振動板の割れ
この2点が起こらない限りは長期の使用が可能です。
ウーファーについてはゴムエッジの劣化が問題となりますが、この口径の振動板であればスピーカー修理業者で対応が可能です。
中古のメリット・デメリット
最新小型スピーカーとmuRata ES024の比較
まずデメリットから。
非常識なほど能率が低く大きめの音量や録音レベルの高い音を再生するとアンプはクリップ(歪みのある雑音)を発生します。
スピーカー・アンプともに極めて危険な状態となり、最悪故障することも考えられます。
対策は電力供給能力の高いアンプを使うことであり、murata ES024の試聴記事においてもおよそ価格バランスの取れない高額かつ大出力のアンプを使っていました。
それでも大音量どころかうるさいと感じるような音量さえ出せないとされました。
メリットは中高域を完全な球形スピーカー形式で再生するという唯一の再生方式。
小型のスピーカーユニットを8面体や12面帯のキャビネットに収めた擬似無指向性とは異なり、完全な球面振動板であったため、その音場再現性は「不気味なほどリアル」といわれています。
「完全な球形」のスピーカーだけが再現する音場・音像表現
今回記録したのは小音量の再生であまりにリアルなステレオイメージが得られるスピーカーだからです。8畳ぐらいの専用リスニング環境において「ある種の音」を求めるときこれに代わるものはありません。
村田製作所は完全球体スピーカーをやりたかった
マイクロホンによる録音ソースの再現について、ある一点から全方位に向けて均一に音が出せるならば、その放射パターンは自然の音に限りなく近いとする説があります。
村田製作所が最終的に実現しようとしたのは完全球体スピーカーだったそうです。
そこに世界的シェアを持つ同社の圧電素子の技術で取り組んだスピーカーがmuRata ES024です、試作機は完全な球体でした。
実際には低音になるほど一点からの放射は不可能になるため(球体の膨張・収縮が大きくなりすぎる)、このスピーカーのように低音は普通のユニットになるのですが。
これ以前にスーパーツィーターES103でハイファイ向け圧電スピーカーを販売しており、一定の支持があったことからこの企画に繋がったと思われます。
不気味なほどリアルと言われたステレオイメージ
低音も出ない、高音が伸びるわけでもない。ただただミニチュアで、それでいながら手でつかめるような音像が浮かび上がる。
利点はそれのみであり、また他のスピーカーでは実現できない音でもあります。
コンデンサースピーカーすら及ばないと言われたほどです。
ある一定以下の音量において、このリアルさは他機種で実現できたものが未だにありません。
また低音が出ないと書きましたが、出ないばかりか録音レベルが高かったり再生音量が大きい場合、容易に音が割れます。
これがコンディションに影響します。
中音量でもボリュームに注意が必要な機種です。
圧電セラミック製の高域部は極めて能率が低く、入力が大きくなりすぎアンプがクリップノイズを発生しやすい仕様であることが理由です。
70dBは聞いたことがないほど能率が低く多分世界でも例がないと思います。そのためアンプにとって厳しい。
低音や人の声の録音レベルが高い場合、中音量でもアンプはクリップします。本当にノイズが出る。
販売当時は客にボリュームを操作させないオーディオ専門店があったほど。
「ムラタセイサクくん」と同じく技術PR用の習作
なおmurata ES024は村田製作所の本社フロアに展示されたこともあり、私のように聴いた経験がおありの方もいらっしゃるのではないかと思います。
広い空間ですから何度かクリップさせたのだと思いますが、音量はデモとはいえないほど絞っていました。
また無指向性であるため壁から距離をとる必要があります。壁の反射で音圧を稼ぐこともできないため音量が上がりがちになります。これもクリップに繋がります。
クリップノイズはスピーカーユニットにもアンプにも悪影響があります。しかもこの機種の場合、普通のスピーカーにとっては全く問題ない条件でさえ起こりかねないものとなる。
中古においてユニットの状態が全てとする理由です。
ただその仕様と個体としてユニットのコンディションがよければ、そして電源にゆとりのある大出力アンプがあれば、これしかない世界を再現します。
当時は「ムラタセイサク君」などのロボットにより、同社のセンサー技術をPRしていた時代でもあり、オーディオという異分野への進出はその方針と無縁ではなかったと思われます。
そこそこ長期にわたって販売を続けていたものの現在後継機種はありません。スピーカーシステム事業そのものが村田製作所から消えています。
murata ES024には巨額の開発コストが費やされており、今後こういったものがリリースされる可能性は限りなく低いと思います。
一度は手に入れて、時間を掛けて鳴らし込むという価値のあるコンポーネントです。