DS-V9000とともに三菱電機ダイヤトーンにとって事実上最後のハイエンド4ウェイスピーカーとなったモデルです。
ワイドレンジの密閉式大型スピーカーとして、国内全メーカーを通じて屈指といえます。
現代のスピーカーと比較しても遜色ない、というより一部の性能は上ですが、ボロン振動板の割れなど固有の欠陥をもつ厄介な中古スピーカーです。
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3つの重要なヤフオク落札履歴
オークションにおいて愛好家が評価する中古DS-V5000の重要な基準である
「コンディション」
「人気」そして「中古価格」
は以下となります。
- 落札価格:¥425,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★★★(126人)
- コンディション :★★☆(Average)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- DIATONE ダイヤトーン DS-V5000 ペア
- 入札・落札情報
- 入札件数:1件(即決価格)
- 開始価格 425,000 円(税 0 円)
- 開始日時 2024.05.03(金)22:07
- 終了日時 2024.05.07(火)19:37
- オークションID s1134478040
- 出品者
- ID抹消
- 出品地域
- 千葉県
ダイヤトーンDS-V5000の音質とは
『DS-V』シリーズのミドルクラスモデル。
V9000よりも音のまとまりが良いと評価されています。
味わいや音楽性はさておき、オーディオ信号の変換精度としては世界最高レベルと言われています。
オーディオ雑誌や評論家の過去レビューまとめ
季刊Stereossound(No.93)においてコンポーネンツオブザイヤー(「C.O.T.Y」)を受賞し、併せて音質についての詳細なレビューが行われています。
ピュアボロン振動板に音楽性が見え始めたと言われるモデルです。
- 音楽信号を正確に変換するという意味で、おそらく世界的にみても傑出した再現性能。しかも異なる素材の振動板を高次元のバランスでまとめ上げている。
- 低音から高音までどこまでも伸びると思わせるようなワイドレンジ。緻密かつ俊敏な応答性を持ち、録音状態や組み合わせるオーディオ機器の素性を露わにする。
- ピュアボロン振動板のスピードにアラミドハニカム振動板の低域が追いついた印象がある。全域にわたる応答性の速さと音色の統一はV9000よりも完成度が高い。シングルワイヤ入力仕様はチューニングに対する自信の表れ。
- 組み合わせるオーディオ機器や部屋の音響特性をあからさまにするところがある、真に特性の良いもの同士の組み合わせが必要になる厳しさをもつスピーカー
- 細部に至るまで入念な防振対策がなされていることが一目でわかる完成度。極めて趣味性が高い。
注目されたDS-V5000の音質技術と現実の評価や人気・ハイレゾなど最新フォーマットを完璧にカバーする特性
「DS-V」シリーズにおける現実的な最高峰モデルとされていました。
トップモデルの「DS-V9000」はあまりに巨大かつ重量級であったためです。
またDS-V5000は「これを買えば、とりあえずスピーカーの性能については心配なくなる」と思われていました。
これは現在もそうですが、物理特性面では録音フォーマットを大幅に超える、最高の性能があると目されていました。
組み合わせるアンプやプレーヤーとセッティングに注力すればいいというもの。
DS-V5000を含む「DS-V」シリーズの中古にワンオーナーが多い理由です。
ハイレゾなど現代の最新フォーマットも完全にカバーする音質があります。
なお三菱ダイヤトーンはボロン振動板では硬質な音調になるという評判に囚われ続けており、「DS-V」特にローエンドモデルのDS -V3000から意図的に柔らかい音調を目指すようになります。
確かにダイヤトーンは変わったと言われた一方で、代償としてDS-1000/2000世代の持ち味であったカミソリで切り裂くような鋭さが失われたともいわれています。
ヤフオク落札相場データ
(2124.9)
良品・ジャンク品ともに価格は上昇しており、低価格から入札案件は減り、高価格の即決案件が増えました。
(2021.9)
ショップ販売価格は税抜き・輸送費別で¥450,000前後となります。
6ヶ月程度の補償付きは必須です。
本機種は本体価格より配送費とコンディション、そして購入後の補償の条件が重く、ショップ・オークションで一概にどちらが安いといえないモデルになります。
オークションでは高額な輸送費が敬遠され、安く出品されることもあるようです。また補償がない場合はショップでも自信がない例が多く、それなりの覚悟が必要になります。
3ヶ月以上前のヤフーオークション落札履歴については、以下の各年度まとめをご参照ください。
※過去3ヶ月間にオークションでの落札がない場合、履歴は表示されません。
※現時点で出品がなされていない場合、検索結果は表示されません。
※Yahooオークションの落札履歴はYahoo規約により最大3年で抹消されます。
当サイトでは消える前にデータを保管し、著作権上問題のないものを掲載しております。
(2024年まとめ)過去のオークション落札履歴
- 落札価格:¥381,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★☆☆(43人)
- コンディション :★★☆(Average)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- DIATONE DS-V5000 スピーカーペア (D-815)
- 入札・落札情報
- 開始価格 10,000 円(税 0 円)
- 開始日時 2024.03.20(水)19:45
- 終了日時 2024.03.24(日)22:47
- オークションID e1129420655
- 出品者
- オーディオリサイクル
- 総合評価(良い):99.7%(1,577件中)
- 出品地域
- 神奈川県
- コンディション説明:
- シリアルNo:不明
- 動作確認済み
- キャビネットに傷・汚れ
- スピーカーユニットに傷なし
- 保護ネットに傷なし
- キャビネットに目立つ傷なし
- 落札価格:¥132,222(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★☆☆(45人)
- コンディション :★☆☆(Poor)
- もっとも避けるべきジャンク品の好例
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 入札・落札情報
- 入札件数:22件
- 開始価格 5,000 円(税込 5,500 円)
- 開始日時 2024.04.15(月)12:32
- 終了日時 2024.04.22(月)23:13
- オークションID e1132681540
- 出品者
- UNISOUNDヤフオク!店(株式会社横浜デザイン)
- 総合評価(良い):99.7%(42,219件中)
- https://yokohama-design.jp/company/
- 出品地域
- 神奈川県 横浜市中区
- コンディション説明:
- シリアルNo:R12403/L12443
- 異なるペアの不良部分を集めて1組を作った可能性大(本来のDS-V5000はシリアル同番)
- スコーカーから出力せず
- ウーファーエッジ、スコーカーエッジが硬化
- ミッドハイの金属製グリルにへこみ
- ウーファーは別モデルのもの
- スピーカーユニットの脱着を繰り返した形跡あり(内部も改造されている可能性大)
- 落札価格:¥357,444(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★☆☆(46人)
- コンディション :★☆☆(Poor)
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 田 法人 引き取り限定 DIATONE ダイヤトーン DS-V5000 スピーカー ペア 動作品
- 入札・落札情報
- 入札件数:36件
- 開始価格 1,000 円(税 0 円)
- 開始日時 2024.05.21(火)19:45
- 終了日時 2024.05.24(金)19:00
- オークションID r1137321495
- 出品者
- LIFE 2nd
- 総合評価(良い):97.3%(977件中)
- 出品地域
- 神奈川県
- コンディション説明:
- シリアルNo:R12518/L12518
- 動作未確認
- 右チャンネルの画像情報皆無
- 一部の画像情報しか公開されていない
- 落札価格:¥203,000(JPY・税別)
- 人気(ウォッチ数):★☆☆(66人)
- コンディション :★☆☆(Poor)
- ボロン振動板割れしたジャンク個体の中古価格例
- ヤフオク出品時の商品タイトル
- 【直】F☆DIATONE ダイヤトーン DS-V5000 スピーカー ペア 法人様のみ JITBOX利用可能 かご台車一個専用 ☆中古☆
- 入札・落札情報
- 開始価格 5,000 円(税込 5,500 円)
- 開始日時 2024.03.01(金)17:49
- 終了日時 2024.03.06(水)22:46
- オークションID l1127020422
- 出品者
- yuasazidousya2(株式会社湯浅)
- 総合評価(良い):99.1%(11,175件中)
- 出品地域
- 福岡県
- コンディション説明:
- シリアルNo:R12481/L12481
- 右チャンネルのツィーター・ミッドハイ振動板が割れている
- キャビネットに傷・汚れ多数(特に右チャンネル)
(2021年まとめ)過去のオークション落札履歴
- 落札価格:¥527,273 (JPY・税別)
- コンディション :★☆☆(Poor)
ダイヤトーンDS-V5000の人気・入札・落札価格情報
- 出品地域:北海道 札幌市
- 出品日時
- 2022.10.05(水)14:50
- 終了予定日時
2022.10.07(金)22:07(自動延長あり)- 延長:2022.10.09(日)22:07
- 開始価格:527,273 円(税込 580,000 円)
- 即決価格あり:636,364円
- 人気・入札ならびに落札履歴
- ウォッチ件数:85人
- 落札数:
- 入札履歴(リンク先参照)
出品者情報(ID・名前・評価)
- 出品者
- 出品者ID:guitar_craft
- 合同会社ギタークラフト(オーディオ買取センター/Guitar Trade Center)
- URL:
オーディオ買取センター|オーディオ機器を高価買取|札幌市オーディオ買取センターはスピーカー、アンプ、チューナー、コンバーター、各種プレーヤー、PCオーディオ、コンポ、DJ機器、アクセサリーなど高価買取!お客様のご負担費用ゼロ!北海道札幌市より全国対応!フリーダイヤル 0570-010-849
- 評価(良い):99.6%(取引20221件中・2022年10月時点)
- 出品URL(Yahoo オークション)
Yahoo!オークション - 日本最大級のネットオークション・フリマアプリ - (オークションID)o1065036351
出品物の状態・コンディション
全般的に使用感があり、外装からは破損するような使用がなされていた形跡があります。
それに対しショップは相応の費用をかけてメンテナンスを施しております。
こういった個体は納得のいくまで画像情報をチェックし、質問等も積極的に行う必要があります。
- シリアルNo
- (右)12345/(左)12345
- 外観
- 塗装状態は全体的に使用にともなう擦り傷あり、大きな傷なし。
- 天板はショップにて再塗装とのこと(画像からは仕上がりコンディションの判別不可能)
天板に長期間物を置いた、あるいはそれに近い使用がなされていたと思われる。 - ※販売者は「スピーカー・アンプ・ギター」の再塗装を業務としている。
- スピーカー端子のぐらつき等はなし。
ホコリが確認できることから天板の補修履歴も含め、前ユーザーの環境は通気性のよい環境で使っていたものではないと思われる。 - エンクロージャー背面の板取り付けネジ穴付近に傷、ショップでの確認によるものか、前ユーザーが内部を見たのかどうかは説明なし。恐らくはユニット断線の修理のためと思われる。
- ユニットに目立つ傷なし。メッシュに擦り傷等がないため、打撃などはなかった模様。振動板のシミについては画像より確認できず。
- ミッドハイユニットは断線のためコイル補修とのこと
- スピーカーフレーム再塗装
フレームの腐食を招くような多湿、または何らかの傷があったと推測される - 動作・音出し・メンテナンス有無
- 音出し確認済み・問題なしとのこと
オーディオショップの中古価格
よくある故障・不具合
以下よりコンディション判定『★★☆(Averag)』の個体。
スピーカーユニットには問題がありませんが、キャビネットに傷があります。
出品されたDIATONE DS-V5000ののコンディション評価
「買ってはいけない」中古DS-V5000のポイント・DIATONE最大の弱点「ボロン割れ」
- エッジの硬化(理由は後述)
- 湿度に対する影響
後年のDS-20000がそうでしたが、ある時期からDIATONEのモデルは「突板が剥がれる」という事例が起きるようになりました。
ダイヤトーンのエッジ硬化、突板剥がれの世代毎の違い
これについては当時の郡山工場の設備更新によるものか、またエンクロージャ外注先での行程変化によるものかどうかは不明です。
初期のDS-5000までは散見されない事例のため、外観からユーザーの保管状態について画像情報または売り手へ対し確認する必要があります。
- ほこりが多い場所は掃除されておらず、空気の循環が悪いことから湿度が高い可能性
- 木部の退色は温度変化が大きかった可能性
- フレーム・ネジのサビは湿度の高い環境の可能性(これは極めて大)
特に2番と3番は画像からも判別しやすいため要確認ポイントとなります。
ボロン振動板の「割れ」情報
- 振動板の割れについて
最も不安視される振動板の割れですが、ダイヤトーンの全歴史を通じたハードドーム振動板の特徴です。
シミのあるものに多く起こる、などの巷説がありますが根拠はありません。
残念ながら
衝撃が加えられなくとも
シミひとつないユニットでも
前触れなく割れます。
衝撃は無論論外ですが(かなり容易に割れます)、それよりも
- 温度・湿度の管理された条件で使われていたかどうか
- (これはユーザーで絶対にわかりませんが)製造時のロットばらつき
この2点で大きく分かれます。
中古ダイヤトーンの購入は配送料金に注意(業者・保険、等)
DS-V5000によらず中古ダイヤトーンは衝撃に対して極めてデリケート。
ピアノ運送業者で落札価格を保険でカバーできる業者を手配することが必須となります。
特に振動板が簡単に割れるため、
通常の引越業者や便利屋さんでは絶対に取り扱いが不可能な個体です。
個人の引越でも別にピアノ業者手配が必須のモデルとなります。
結果として中古本体の価格より配送料が高いという事例もよく起こります。
また北海道ならびに九州は他地域への輸送コストが高く、本州以南からの入札は結果として高額になる可能性があります。
DIATONE DS-V5000の仕様
「5000番」の名前を冠されていますが、実質はDS-3000の後継機、というよりアップグレードモデルとなります。
上級機種の「V9000」があまりに重く、大型であったため「家庭で取り扱いしやすい重さ」として売れたという側面のあるモデルです。
メーカー・発売年次と定価
- メーカー・モデル名
- メーカー:DIATONE(三菱電機)
- モデル名:DS-V5000
- 発売年度:1989年
DIATONE DS-V5000の主要スペックと音質技術
「DS-V」シリーズの特性は現在(2024年)でもトップクラスと呼べるもの。
その中でもDS-V5000は密閉型ならではの伸びた低域が特徴です。
また防振対策については他社では見られない(分野違いながら一社だけあります、「サンスイ」がそうです)入念なものであり、少々常軌を逸したと呼べるものです。
- 主要スペック
- 再生方式:4ウェイ4 スピーカー・密閉方式・フロア型・防磁(EIAJ)タイプ
- 使用ユニット
- 低域用:32cmコーン型
- 中低域用:18cmコーン型
- 中高域用:6.0cmドーム型
- 高域用:2.3cmドーム型
- 公称インピーダンス 6Ω
- 再生周波数帯域 23Hz~80kHz
- 出力音圧レベル 91dB/W/m
- クロスオーバー周波数 320Hz/1.2kHz/4.5kHz
- 最大入力 180W(EIAJ)
- 定格入力 60W(EIAJ)
- 外形寸法 幅510x高さ1,000x奥行420mm
- 重量 84kg
- スペック上の注目ポイント
- B4Cボロン振動板による中高域の再生
- ミッドハイとトゥイーターには高剛性振動板構造であるD.U.D(ダイアフラムとボイスコイルボビンを一体化)
- 高剛性ユニット構造であるD.M.(ダイレクトマウント)
- スーパーアラミド素材によるミッドロー/ウーファー振動板
- 表面はアラミド繊維、内部はハニカム構造
- 表面材のアラミドはDS ~V9000よりも軽量化されている
- 磁気回路はA.D.M.C.-i(Advanced Magnet Circuit-impulse)
- フェライトマグネット
- センターポールに導電性のリングをダブルに配することでボイスコイルからの交流磁束を相殺(最適寸法形状物性値を持つ歪抑制リングを配置することで入力信号に対する応答性を高めた)
- 直流磁束と交流磁束との重畳で起こる磁気歪を抑制
- 磁気回路内の交流磁束による直流磁束の乱れを低減
- 事実上ハイレゾをカバーする高域限界
- アラミドハニカム構造のウーファー振動板とハイレスポンスのエッジ構造
- 細部まで共振コントロールを行なった防振対策
- ミッドハイとトゥイーターの保護用ネットには硬鋼線と銅線とのハイブリッド構造
- ミッドバスユニットには、球状黒鉛鋳鉄の防磁シールディングが施されており、電磁妨害と防振対策を行う
- 制振材料を用いた取り付けネジを採用し、ネジ頭には樹脂製のカバーをつけた
- フレーム及びプレートにダンピングの効いた特殊塗料を塗布
- 明確な音像/音場表現を実現するための反射・輻射防止対策
- スピーカーユニットのフレームに最適なマイクロドームズの形状と寸法を算出した小さな球状突起を多数設けて音波の回折を抑制
- ネットワークはヒアリングを重ねて決定された高音質パーツ
- 専用コンデンサー
- 金属境界面歪の低減と高信頼性を実現させた無酸素銅線スリーブによる圧着ワイヤリング
- 内部配線材に高純度無酸素銅
- 入力端子は大型かつ金メッキ仕様(シングルワイヤ)
- キャビネットは厳選された部材を採用
- ウォールナット化粧突き板仕上げ(ウレタン塗装)
- フロントバッフルは、38mm厚のシベリア産カラ松合板の直交張り合わせ
- コーナーをラウンドさせ音波の回折をスムースにしたバッフル
- リアバッフルにはピアノ材に使われるシトカスプルースのランバーコア
- 側板・天板はカナダ産の針葉樹材2プライ・パーティクル・ボード
- 天板組みはローズウッドのソリッド材によるはめ込み構造(振動の減衰特性に優れる)
- スピーカーベースはカナディアンメープルをランバーコアで仕上げたもの
- B4Cボロン振動板による中高域の再生
製造技術からみるオーディオ機器としての寿命・「ダイヤトーン工房」のはずが突板剥がれ
ダイヤトーンに有名な不具合としてはボロン振動板割れがありますが、あまり知られていない同社の欠陥として「突板剥がれ」があります。
DS-V5000にも見られる不具合であり、オーディオ機器として、というよりスピーカーとしての寿命に問題があります。
80年代は全く見られなかったこの不具合が、90年代の中古からは散見されます。
特に「ダイヤトーン工房」を大きくPRした時代のものは要注意です。
ダイヤトーンのキャビネット製造工程は福島県にある郡山工場がメインファクトリーでしたが、品質面では明らかな変化がありました。
中古DIATONE DS-V5000のメリット・デメリット
最新ハイエンドスピーカーとの比較
- メリット:ハイレゾなど最新の音楽フォーマットやハイエンドのアナログ再生も完全に対応する優れた特性
- デメリット:ボロン振動板の割れは予見不可能であり、打撃を受けていない良品の中古個体は年々相場が上昇している。また入念な防振対策ゆえその他のモデルと比べエッジ軟化作業の難易度が高い
DS-V9000の後に開発された、V-3000とともに事実上ダイヤトーン45周年を記念したモデルです。
当時ハイエンドスピーカーの選択肢として人気は高かった。
現代でもオーディオに採用できないような先端素材が使われており、その特性はトップクラスです。
NHK向けとして開発された2S-3003も同時期に開発の製品であり、以降のモデルがVシリーズの技術をベースにしたことからも事実上ダイヤトーンが日本製オーディオ機器の頂点にあった頃の機種となります。
密閉型スピーカーとして現時点でも高水準の仕様と製造技術
この機種には大きな特徴が3点あります。
- 4ウェイかつ密閉型として現時点で国産最高峰
- DIATONEがエンクロージャを「鳴らし」はじめた嚆矢
- ウーファーユニットの設計はその後長く同社ハイエンドの標準になった
「5000」番とありますが、事実上DS-3000の後継となります。
つまりバスレフでなく、密閉型スピーカーとしてのトップエンド。
しかも4ウェイで、現在に至るまでこのアプローチで作られた国産スピーカーとして例がない高水準です。
B&WやMARTEN・MAGICOなどがやっとダイヤトーンに追いつき始めたスピーカー振動板
B4Cボロン振動板を中心に、低域にはこのモデルでリファインされたアラミドハニカムの振動板を密閉で使い、実際の音もより低い周波数への伸びを優先しています。
現在のB&WやMARTENなど、そしてMAGICOの振動板をみるとやっと「ダイヤトーンレベルの新素材」を使い始めております。
これらを競合機種と呼んで差し支えないほどの技術が投入されており、特性は一線級です。今後も同様の性能をもったものが登場する可能性は低いのではないかと思われるほど。
良質な個体は、現在のハイレゾはもとよりハイエンドのアナログ再生を他にない水準で演奏します。
V9000から始まった滑らかな音・特にV5000以降はきつさが無い
なお旧DSシリーズで言われていた「ダイヤトーンは解像度は高いがきつい音」という音質傾向はV9000ですでにほとんど滑らかになっていましたが、このモデル以降完全に無くなっていきます。
30cmウーファーでかつ密閉型という一般家庭で良質な特性を得やすい形式。
最上位機種であるV9000と違うのはシングルワイヤ入力であることです。
バスレフのウーファーとミッドレンジ以上のキャラクターが異なり、鳴らすのに苦労するV9000とは異なり、高音から低音まで極めてバランスがいい。
ピアノ1台分のスプルースを使った「きれいな響きの」キャビネット
V9000ではまだ剛性重視でしたが、このV5000からは背面をスプルースにしてわざと鳴らすなどそれまでのDIATONEでは考えられなかったアプローチが始まっております。
ほぼ同じ時期に開発されていた2S-3003の影響が少なくないものと思われますが、ある意味もっとも大きな変化です。
一説には1ペアのDS-V5000にはグランドピアノ1台分のスプルースが使われたとも言われます。
外見からちょっと想像できないほど滑らかな音は箱によるところもまた大です。
DS-V3000以降も踏襲されたSNに優れる高品位ウーファーユニット
このモデルの特徴はB4Cボロン受け持ちの中高域ではなく、ウーファーユニットです。
表面のアラミドに工夫があります。
ダイヤトーンはこのモデルでアラミドハニカムコーンを全面的に見直し、
DS -V9000と比較してさらに軽量化した振動板としています。
エッジ(サラウンド)にも大きく手を入れました。
3軸織という工数の掛かる手法を用いています、これはDS-2S3003で成功した技術で
- 強靭なハニカム振動板を支える強さ
- 応答性を上げる柔軟さ
- エッジそれ自体の固有音を下げる
それぞれ矛盾する要素を解決しようとしたフィーチャーです。
本モデルはそれに成功し、低音表現で格段の高SNをもたらしました。翌年発売のV3000にも同じ技術が採用されています。
ローノイズの高音質エッジ技術が招いた「ダイヤトーンのエッジ硬化」
そしてこのローノイズかつ応答性の高さを実現したオーディオ技術が、工業製品として欠陥になる好例ともなりました。
「DSーV」シリーズではエッジそれ自体の発する固有音、すなわちノイズを低減することに大きな努力が払われました。
共振しづらくかつ抵抗の少ない動きを追求したダンプ剤は、音質面では素晴らしかったものの経時変化の確認は無視されていました。
歴代ダイヤトーンでもVシリーズから特に明らかな硬化
そのため、「DSーV」シリーズは販売後数年でエッジの硬化が始まった。
エッジ硬化はダイヤトーンのスピーカー群全般の悩みですが、Vシリーズ以降は特にその傾向が強い。
V9000以降変化したエッジのダンプ剤はそれ以前のものより短期間で硬化しやすく、またより硬くなってしまうという経時変化を招きました。
低音特性は明らかに劣化します、エッジが硬化しウーファー振動板が動かないためです。
同社スピーカー部門が一度解散した今となってはどんな物性のダンプ剤を使ったのか詳細を知ることは不可能ですが、ともかくも
固有の鳴きが無く、それでいてレスポンスが速いVシリーズエッジ
はそれまでのダイヤトーンモデルと比べても硬化が顕著で、Vシリーズのユーズド個体は販売数に比べて市場流通が少ない。
それ以前に販売されていたDS-5000/3000/2000シリーズのユーズドはまだ多いことと比べ、Vシリーズ以降のモデルの中古流通が少ない理由については購入前に一度考えられることをおすすめします。
エッジ軟化剤はかならずしもおすすめ要素だけでない・スピーカー振動板とエッジ接着部への影響
ダイヤトーンの中古スピーカーはエッジ軟化剤必須です。
なかには「専用エッジ軟化剤」と称して専門のごとく販売されているものもある。
実態は車やバイクのブレーキフルードです。
塗ればリスニングルーム内で気化するため人体への影響も考える必要がありますが
それ以上に問題はエッジと振動板の接着部分への影響です。
ブレーキフルードをいわば溶剤として使っているので、接着部が剥がれておかしくない。
DIATONEの使用していた接着剤について、
三菱電機の仕様書を確認し
接着剤の物性を確認し
品質試験をした
こういったエッジ軟化剤は存在しません。
購入する上では理解しておく必要があります。
中古において覚悟を必要とするダイヤトーンですが、それでも魅力があるのは技術と材料、そして作り込みが現時点にあってもあまりに高度だからです。
それだけにユーズド個体選びは慎重にしたいモデルであります。